2017年1月から始まった「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」。
2018年の確定申告から、従来の医療費控除か、セルフメディケーション税制による控除かを選べるようになりました。
どちらで申告するのがよいか、控除額の計算方法をやさしくまとめました。
「確定申告」で所得税の還付を受けられるかも?
所得税を納めている方は、確定申告(受付期間:2月16日~3月15日)をして「医療費控除」あるいは「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」を申告すると、納めた税金の一部を還付してもらえるかもしれません。
セルフメディケーション税制で節税のハードルが下がった
2017年1月から始まった「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」は、健康診断や予防接種など、「健康の維持増進」「疾病の予防」に取り組んでいる人に対して、購入した市販薬の金額に応じて所得控除を受けられるようにする、新しい制度です。
市販薬の購入代金が控除対象となったため、これまで「医療費控除」では対象とならなかった人にも、節税の機会が広がりました。
ただし、「医療費控除」と「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」を併用することはできません。
どちらがより多く還付してもらえるのかは、それぞれの控除額を比較してみなければわかりません。
どちらの控除額も、生計を一にする家族分の、1月1日~12月31日までの合計額で計算します。
扶養になっていれば、県外で大学に通っているお子さんの医療費もまとめて申告できます。
それぞれの控除額を計算してみましょう。
「医療費控除」の控除額計算方法
医療費控除は、通院・入院など病気やけがの治療で支払った医療費に対して、所得に応じた控除を受けられる制度です。
- 控除額 = 医療費の年間合計額 - 10万円または所得の5%
おおまかにいうと「医療費の合計から10万円引いた額」ですね。
なお、医療費として認められるもの、認められないものが細かく決まっています。
医療費として認められるのは?
- お医者さん、歯医者さんで診療・治療時に支払った自己負担額
- 治療・療養に必要な医薬品を購入したお金
- 通院のための交通費
- 保健師・看護師などに依頼した付き添い料
- 寝たきりの人のおむつ代(医師の証明書の添付が必要) など
おむつ代や通院時の交通費が認められるのはありがたいですね。
バスの運賃などは領収証が出ませんので、通院の日付と支払った運賃を記録しておきましょう。
医療費として認められないのは?
- 健康診断の費用(※)や予防接種の代金、お医者さんへの謝礼金
- ビタミン剤など、病気の予防や健康増進のための医薬品
- 通院時の自家用車のガソリン代
- 家族に付き添いのお礼として払ったお金
※健康診断の結果、病気が見つかった場合は「治療のための検査」となるため、医療費として計上できます。
たとえば治療に必要な歯列矯正は医療費として認められるけれど、美容のための歯列矯正はダメ。
処方箋による医薬品の購入は認められるけれど、肩こりで買った湿布薬はダメ。
「治療のための医療費」として認められるものが対象になります。
判断に困ったら、税務署へ問い合わせてみてください。
医療保険などで給付金が出た場合は、対象の医療費から差し引きます
たとえば入院したときなど、加入している医療保険で給付金を申請することも多いと思います。
その場合は「入院で支払った金額」から給付金を差し引いて(給付金が上回った場合は支払額と同額を差し引きます)計算します。
給付金を利用した場合は、給付明細書も保管しておきましょう。
「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」の控除額計算方法
2017年1月1日以降に、対象となる市販薬(スイッチOTC薬といいます)を年間12,000円を超えて購入した場合に、12,000円を超えた分の金額(上限88,000円)について、所得控除を受けることができます。
- 控除額 = 年間の市販薬の購入費用合計 - 12,000円(上限88,000円)
控除の対象となる人
- 健康診査
- 予防接種(定期接種を除く)
- 職場でおこなう定期健康診断
- 特定健康診査
- がん検診 のいずれかを受けた人
控除の対象となる医薬品
厚生労働省のウェブサイトに、対象の医薬品のリストがあります。
また、対象となる医薬品のパッケージには次のマークが入っているものも多いので、購入時の目安にしてください。
控除額 = 還付額ではありません
確定申告をすれば、控除額がそのまま還付されるというわけではありません。
所得に応じた税率をかけた金額が、「納めすぎていた分」として還付されます。
どちらがオトク?かんたんに比較できるサイトがあります
セルフメディケーション税制に関して、丁寧でわかりやすいサイトがあります。
下記のページでは、従来の医療費控除とセルフメディケーション税制を活用した場合の減税額が、数字を入れるだけでおおまかに比較できるようになっていて、とても便利です。
領収証やレシート、必要書類は保管しておきましょう
いずれの控除をうけるためにも、領収証やレシートなどの「証拠」が必要です。
1年分(1月1日~12月31日)の合計額を計算しますので、使うのは来年。
それまで捨てずに保管しておきましょう。
また、いずれの控除を受ける場合も、ほかにも必要な書類がありますので、お近くの税務署で確認してください。
市町村主催の無料相談が便利です
確定申告が初めてで不安な人は、市町村主催の「無料相談」に訪れてみてはいかがでしょう。
インターネットが使える人は、e-tax(電子手続き)で、すぐに確定申告の手続きができます。
- 領収証、レシート等の集計はしておきましょう(相談窓口では書類の整理まではしてくれません)
- 確定申告期間のため、大変混雑します
- 税務署に問い合わせるなどして、必要な書類は事前に確認・準備しておきましょう