介護サービスを初めて利用するひとにとって、どこでどんなサービスが受けられるかは未知の世界。
専門用語もたくさんあって、初心者にとって「まずそれがわからない」というのが悩みのタネです。
介護サービスの種類について、やさしくまとめました。
介護保険で利用できるサービスは、要介護度によって異なります
介護保険で受けられるサービスには、
- 要介護1~5と認定された人が利用できるサービス
- 要支援1~2と認定された人が利用できるサービス
があります。
これらは要介護度といい「どれくらい介護のサービスをおこなう必要があるか」の目安です。
要介護認定という手続きで、利用者の要介護度を決定します。
要介護度に応じて利用できるサービスや金額が異なるため、下記のすべてのサービスを自由に選び、利用できるわけではありません。
介護の相談・ケアプランの作成
介護保険を利用して介護サービスを受けるには、さまざまな手続きが必要です。
利用者本人、家族の希望をできるだけ実現できるよう、専門家に相談するところから始まります。
居宅介護支援
ケアマネジャー(介護支援専門員)が、介護サービス全般についてサポートしてくれます。
利用者の要介護度や心身の状況、家庭環境などを確認し、介護の計画書である「ケアプラン」を作成します(無料です)。
ケアプランにもとづいて、実際にサービスをおこなう介護サービス事業者や関係機関との連絡・調整をおこない、適切な介護サービスを安心して利用できるようにしてくれます。
介護や介護サービスに関する相談もできる、利用者とその家族にとっての介護相談窓口ですね。
※要支援の方のケアプランは地域包括支援センターが作成します。
自宅を訪問する「居宅サービス」
自宅で生活しながら受けられる「居宅サービス」は、自立した生活を営むための介護や、介護施設に通いながら支援を受けるものなどがあります。
訪問介護(ホームヘルプサービス)
ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助をおこないます。
- 身体介護:排泄、お風呂、食事のお手伝いなど。
- 生活援助:家事、買い物、食事の準備など。
通院のお手伝いを提供する事業所もあります。
なお、利用者の家族のための家事や、日常生活の範囲外のこと(大掃除とか草むしりとか)はできません。
※要支援の方は、介護予防・生活支援サービス事業の「訪問型サービス」を受けることができます。
夜間対応型訪問介護
「定期巡回」と「随時対応」の2種類のサービスがあり、夜間あるいは24時間の介護サービスを受けることができます。
訪問入浴介護
看護職員と介護職員が入浴のお手伝いをします。
専用の浴槽を自宅へ持ちこんでおこなうので、寝たきりで入浴が困難な方や、自宅の浴槽がせまい方でも安心して利用できます。
訪問看護
看護師などが自宅を訪問し、主治医の指示にもとづいて療養上の世話や診療の補助をおこないます。
- 血圧、脈拍、体温の測定、病状のチェック
- 排泄、入浴、清拭の介助
- 在宅酸素、カテーテルの管理、リハビリ
- 在宅での看取り
などをおこないます。名前は似ていますが「訪問介護」とはサービスの性質も内容も異なります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期的な巡回や随時通報など、24時間365日、必要なサービスを必要なタイミングで利用できます。
看護師なども連携しているので、介護と看護の一体的なサービスを受けることもできます。
※要支援の方は利用できません。
訪問リハビリテーション
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家が自宅に訪問し、リハビリテーションをおこないます。
施設に通う「通所サービス」
「通所サービス」は、施設などに出かけて利用する、日帰りの介護サービスです。
通所介護(デイサービス)
日帰りで施設に通い、食事や入浴の介護、リハビリを受けられるサービスです。
グループ活動などの高齢者同士の交流もあり、とじこもりや孤立を防ぐ効果もあります。
※要支援の方は、介護予防・生活支援サービス事業の「通所型サービス」を受けることができます。
地域密着型通所介護
地域密着型通所介護施設(利用定員19人未満のデイサービスセンターなど)で行われるサービスです。
料金等が異なります。
療養通所介護
看護師による観察を必要とする難病、認知症、脳血管疾患後遺症等の重度要介護者、がん末期患者の方が対象です。
医師や訪問看護ステーションと連携しているので、安心してサービスを受けられます。
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
認知症の方を対象に、専門的なケアが受けられます。
通所リハビリテーション(デイケア)
日帰りで施設に通い、食事や入浴などの日常生活上の支援に加えて、リハビリを受けることができます。
- 運動器の機能向上
- 栄養改善
- 口腔機能の向上
短期間の宿泊をする「ショートステイ」
ショートステイは、施設に入居または短期間宿泊して、生活援助等を受けられるサービスです。
短期入所生活介護(ショートステイ)
入浴や食事など、日常生活の介護や機能訓練などを受けながら、連続30日まで施設で生活できるサービスです。
自宅にこもりきりになりがちな利用者の孤立感の解消だけでなく、家族の介護負担を軽くすることにもつながります。
対象となるのは
- 利用者の心身の状況や病状が悪い場合
- 家族(介護者)の疾病、冠婚葬祭、出張
- 家族(介護者)の身体的・精神的負担の軽減 など
短期入所療養介護(ショートステイ)
医療機関や介護老人保健施設で、入浴、食事などの日常生活の介護にくわえ、医療、看護、機能訓練を受けながら、連続30日まで施設で生活できるサービスです。
自宅にこもりがちな利用者の孤立感の解消だけでなく、家族の介護負担を軽くすることにもつながります。
訪問・通い・宿泊を組み合わせた「多機能・複合型」
小規模多機能型居宅介護
施設への通いを中心に、短期間の宿泊や自宅への訪問を組み合わせたサービスです。
利用者の心身の状況に応じて、柔軟なサービスが受けられるのが特徴です。
複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
施設への通いを中心に、短期間の宿泊や自宅への訪問を組み合わせたサービスです。
看護師による訪問看護が組み合わされることで、介護と看護がより密接に連携したサービスを受けられます。
※要支援の方は利用できません。
施設で生活を送る「入所サービス」
療養しながら在宅復帰をめざしたり、看護等を受けながらできるだけ自立した生活を送るための施設です。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
寝たきりなど常に介護が必要で、在宅での介護が困難な方が、可能な限り在宅復帰することをめざしつつ生活する施設です。
入浴や食事などの日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話などを受けることができます。
施設サービス費(施設により異なります)のほか、居住費・食費・日常生活費などがかかります。
※要支援の方は利用できません。
※要介護1、2の方もやむを得ない理由がある場合以外は利用できません。
介護老人保健施設(老健)
在宅復帰をめざす方が、リハビリテーションや必要な医療、介護などを受けながら生活する施設です。
施設サービス費(施設により異なります)のほか、居住費・食費・日常生活費などがかかります。
※要支援の方は利用できません。
介護療養型医療施設(療養型病床群等)
長期にわたって療養が必要な方が、機能訓練や必要な医療、介護などを受けながら生活する施設です。
療養病床をもつ病院や診療所によるサービスのため、医療面でのケアが安心で、看取りもおこなっています。
施設サービス費(施設により異なります)のほか、居住費・食費・日常生活費などがかかります。
※要支援の方は利用できません。
小規模でアットホームな「地域密着型サービス」
地域密着型サービスは、市町村管轄のもと小規模な施設でおこなわれるサービスです。
家庭的な雰囲気であったり、病院等との連携がとりやすいなどのメリットがあります。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症の方をが専門的なケアを受けられるサービスです。
グループホームに入所し、家庭的な環境と地域住民との交流のもと、食事や入浴などの支援や、機能訓練などのサービスを受けられます。
グループホームでは、1つの共同生活住居に5~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送ります。
※要支援1の方は利用できません。
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
小規模の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で、常に介護が必要な方が、入浴や食事などの支援や機能訓練、療養上の世話などのサービスを受けながら生活します。
明るく家庭的な雰囲気と、地域や家族との結びつきを重視したサービスです。
福祉用具を使用するためのサービス
福祉用具は、自立した生活を維持したり介護の負担を減らすための補助をしてくれます。
レンタル品と購入品がありますが、その費用の一部を介護保険の支給でまかなうことができます。
福祉用具貸与
車いすや介護用ベッドなど、必要な福祉用具のレンタル費用の負担額を軽減してくれるサービスです。
ほかにも歩行器、徘徊感知機器、自動排泄処理装置など13品目があります。
特定福祉用具販売
衛生面でレンタルが難しい、入浴や排泄等に用いる福祉用具について、購入費用の9割を支給してくれるサービスです。
利用者がいったん全額を支払った後、申請することで費用の9割が介護保険から払い戻されます。
なお、同一年度で購入できるのは10万円までです。(この場合、9万円が介護保険から給付されます。)
対象となるのは、腰掛便座、自動排泄処理装置の交換部品など5品目です。
住宅改修費支給
手すりの取り付けや段差解消など、住宅の改修をした際に20万円を上限として費用を支給してくれる制度です。
事前の申請が必要となりますので注意しましょう。
介護予防・日常生活支援サービス事業
要支援の方や、介護予防・生活支援サービス事業対象者が利用できるサービスです。
窓口で基本チェックリストを受けて、生活機能の低下がみられた場合、利用することができます。
市町村が実施するサービスですので、サービス内容や料金についてはお住まいの市町村の窓口か地域包括支援センターでおたずねください。
訪問型サービス
居宅での身体介護や生活援助、健康に関する指導など、ホームヘルパーや保健師などが訪問してサービスをおこないます。
通所型サービス
通所介護施設で、日常生活上の支援や、レクリエーション・通いの場の提供、保健・医療の専門職による指導などをおこないます。
その他の生活支援サービス
見守りや栄養改善を目的とした配食サービス、安否確認や緊急時の対応をおこなう見守りサービス、自立支援に役立つ生活支援などです。
老人ホーム、高齢者向け住宅
介護サービスではありませんが、老後の住まいについてもふれておきます。
介護サービスがついた施設や介護は外部サービスを利用するものなどさまざまです。
ケアハウス(軽費老人ホーム)
無料または比較的低額な料金で入居できる施設で、食事や日常生活の支援をしてくれます。
「A型」「B型」「ケアハウス」の3種類があり「A型」「B型」は介護が必要な方は入居できません。
「ケアハウス」は介護サービスも受けられます。
有料老人ホーム
食事や入浴介助などのサービスを受けられる、高齢者向け住居です。
食事やレクリエーションなどのサービスが一般的ですが、24時間介護スタッフが常駐する施設がある一方、介護が必要となったら退去しなければならない施設もあるなど、対象となる方、サービスは施設によって大きく異なります。
サービス付き高齢者向け住宅
バリアフリー構造など高齢者の生活に合わせたつくりで、見守りサービス(状況把握・生活相談サービス)がついて安心な生活を送れる住居です。
できるだけ自立して自由な生活をしたい方に向いています。