働く人が家族の介護に直面したとき、最初に思うのは「仕事を続けていけるだろうか」かもしれません。
介護と仕事を両立させるためにどんなことをすればいいか、やさしくまとめました。
まず知っておきたい「介護保険制度」と「両立支援制度」
家族への心配はもちろんのこと、どんなふうに介護したらいいか、介護サービスはどんなものがあるのか、手続きはどこでどうしたらいいのか、仕事への影響など、たくさんの不安があると思います。
まずは次の制度について、おおよその情報をつかんでおきましょう。
1.介護保険制度・介護保険サービスについて
40歳以上の人が必ず加入する「介護保険制度」では、介護の必要度や生活のスタイルにあわせて、さまざまな介護保険サービスを受けることができます。
介護サービスを受けるには、市区町村の介護保険担当課か「地域包括支援センター」に相談・申し込みをし、担当のケアマネジャーがつくところから始まります。
あらかじめ手続きの流れや、介護保険サービスの種類を知っておくと、相談もスムーズに進みますよ。
2.両立支援制度について
「育児・介護休業法」では、家族の介護をしながら働く人が、介護休暇・介護休業・労働時間の短縮などを会社に請求することが認められています。
請求できる条件を満たしていれば、会社は特別な事情がない限りこの請求を拒否できません。
また、会社によってはこの法律以上のサポートを定めていることもあります。
職場の上司や人事労務担当部署に、どんな制度が利用できるかを確認しましょう。
参考
【平成29年10月1日施行対応】育児・介護休業法のあらまし厚生労働省
2つの制度を組み合わせ、仕事と介護の両立を持続できる環境を整える
仕事と介護の両立は、介護保険制度と両立支援制度、二つの制度を上手に組み合わせることが大切です。
- 介護についてはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
- 働き方については上司や同僚、人事労務担当者に相談する
介護保険サービスと職場の制度を活用して、介護をしながら働ける環境を整えましょう。
厚生労働省のパンフレット「仕事と介護 両立のポイント」には、具体例もわかりやすく紹介されています。
ぜひ一度目を通してみてください。
組み合わせの例(厚労省パンフレットより抜粋)
労働者:正社員(残業や出張あり) / 要介護者:要介護4
課題
状況に応じて介護サービスを柔軟に利用したい。
解決方法例
仕事や要介護者の状況に合わせて、通い、訪問、泊まりのサービスを柔軟に調整。
送迎時間に合わせてフレックスタイム制度を活用
介護に関するサービス・支援
- 小規模多機能型居宅介護(介護保険)通い・訪問・泊まりなどを組み合わせたサービス
出張のある日は泊まりを利用。要介護の親の体調の悪い日は通いを訪問に変更。
職場の両立支援に関する制度
- フレックスタイム制度 就業時間の調整に関する制度
送迎の送り出し・迎え入れに合わせて活用。 - 半日単位の介護休暇制度 休暇・休業の取得に関する制度
通院時に活用。
組み合わせのポイント
- 通い、訪問、泊まりのサービスを柔軟に利用することのできる小規模多機能型居宅介護を活用し、残業や出張時には泊まりを利用したり、通いの時間を増やすなどで対応。
- 送迎の送り出し・迎え入れはフレックスタイム制度を活用して勤務時間を調整。
- 通院時には半日単位の介護休暇を活用して付き添い。
労働者:正社員 / 要介護者:要介護5
課題
在宅で介護することが難しいため、施設を探したいと思っています。
解決方法例
自宅から通いやすい場所に介護付き有料老人ホームを見つける。
フレックスタイム制度を活用して、週1~2回、通勤途中、施設に寄る。
介護に関するサービス・支援
- 特定施設入居者生活介護〈介護付き有料老人ホーム〉(介護保険)施設などで生活しながら受けるサービス
有料老人ホームに入居し、入浴、排泄、食事等の介護を受ける。
職場の両立支援に関する制度
- 介護休業制度 休暇・休業の取得に関する制度
施設探し等のため 2か月間取得。 - フレックスタイム制度 就業時間の調整に関する制度
有料老人ホームに寄るために活用。
組み合わせのポイント
- 入院中の面会や世話、退院手続き、施設入所手続きのために、介護休業制度を 2か月間取得。
- 施設は、頻繁に会いに行きたいため、自宅近くの施設を数件見学。通勤途中の通いやすい場所にある施設を見つけることができた。
- フレックスタイム制度を利用して、週に1~2回は、朝や帰りに施設に寄って、顔を見に行く。
- 介護休業に入る前には、職場で仕事の引継ぎ等をしっかり行う。また、復帰前には、職場の上長と面談し、復帰に向けて不安に感じていることなどを伝える。
参考
平成29年度版「仕事と介護 両立のポイント あなたが介護離職しないために」【概要版】(PDF)厚生労働省
安定して働き続けるために
介護は誰にでも起こりうることです。
介護をしながら仕事を続けるためには、あなた自身が無理しすぎないことが大切です。
職場と良好な関係を保つ
介護のために仕事の時間を減らしたり、長期の休みをとるには、職場の理解や協力も必要になります。
休業は何のためにとるのか、休業後どのような働き方をするのかなど、きちんと職場に説明しましょう。
あなたが不在の間のフォローをしてくれる同僚たちへ感謝の気持ちを伝えたり、休業中も週に一度は状況を報告するなど、信頼を損なわないようにしたいですね。
ひとりで抱え込まない
介護をすべて自分でおこなおうとしない、というのも大切なことです。
他の家族と協力しあいながら、一人で抱え込むことがないようにしましょう。
プロに任せられる部分は介護保険サービスを利用したり、たまには家族に任せて休養をとるなどもいいですね。
終わりの見えない介護であるからこそ、専門家や周りの人に相談しながら、自分にできる範囲で持続できる環境を整えたいですね。