介護休暇・介護休業などを取得できる「育児・介護休業法」について

仕事をもつ人にとって、両親や身内の介護と仕事の両立は難しいものです。
精神的・肉体的な疲労も大きく、悩んだあげく退職を選ぶ、という人も多いのが現状です。
「介護休暇」や「介護休業」は、病気や怪我で家族に介護が必要になった場合に会社を休むことができる制度です。
ご自分の状況にあわせて上手に活用しましょう。

働きながら育児や介護をする人を支援する「介護・育児休業法」

育児・介護休業法は、育児および家族の介護をおこなう労働者が、仕事と家庭を両立できるよう支援するための法律です。
内容は、育児や介護のための休業・休暇、労働時間の短縮・変更、制度を利用したことにより労働者の立場が悪くならないようにする義務などがあります。
このページでは「育児・介護休業法」の内容を抜粋して解説します。

介護休業・介護休暇

介護休業

介護休業は、病気・ケガ・身体的あるいは精神的な障害によって2週間以上の期間、常時介護を必要とする「要介護状態」にある「対象家族」を介護するためにする休業のことをいいます。

「要介護状態」とは

この場合の「要介護状態」は、次のどちらかに当てはまる状態で、以下の制度すべて同じです。

要介護状態の判断基準
  1. 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
  2. 状態①~⑫のうち、2が2つ以上又は3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。
状態/項目 1(注1)
2(注2)
3
①座位保持
(10分間一人で座っていることができる)
1.自分で可
2.支えてもらえればできる(注3)
3.できない
②歩行
(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる)
1.つかまらないでできる
2.何かにつかまればできる
3.できない
③移乗
(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作)
1.自分で可
2.一部介助、見守り等が必要
3.全面的介助が必要
④水分・食事摂取
(注4)
1.自分で可
2.一部介助、見守り等が必要
3.全面的介助が必要
⑤排泄 1.自分で可
2.一部介助、見守り等が必要
3.全面的介助が必要
⑥衣類の着脱 1.自分で可
2.一部介助、見守り等が必要
3.全面的介助が必要
⑦意思の伝達 1.できる
2.ときどきできない
3.できない
⑧外出すると戻れない 1.ない
2.ときどきある
3.ほとんど毎回ある
⑨物を壊したり衣類を破くことがある 1.ない
2.ときどきある
3.ほとんど毎回ある(注5)
⑩周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れがある 1.ない
2.ときどきある
3.ほとんど毎回ある
⑪薬の内服 1.自分で可
2.一部介助、見守り等が必要
3.全面的介助が必要
⑫日常の意思決定
(注6)
1.できる
2.本人に関する重要な意思決定はできない(注7)
3.ほとんどできない
  • 注1:各項目の1の状態中、「自分で可」には、福祉用具を使ったり、自分の手で支えて自分でできる場合も含む。
  • 注2:各項目の2の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。
  • 注3:「①座位保持」の「支えてもらえればできる」には背もたれがあれば一人で座っていることができる場合も含む。
  • 注4:「④水分・食事摂取」の「見守り等」には動作を見守ることや、摂取する量の過小・過多の判断を支援する声かけを含む。
  • 注5:⑨3の状態(「物を壊したり衣類を破くことがほとんど毎日ある」)には「自分や他人を傷つけることがときどきある」状態を含む。
  • 注6:「⑫日常の意思決定」とは毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定ができる能力をいう。
  • 注7:慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定はできるが、本人に関する重要な決定への合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合意等)には、指示や支援を必要とすることをいう。

「対象家族」とは

対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫で、以下の制度すべて同じです。
同居や扶養などの条件はありませんので、離れて暮らす両親のために制度を利用することもできます。

対象となる労働者

要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く)
ただしパート・派遣社員などの有期契約労働者の場合は、介護休業取得予定日から9か月後までに労働契約期間が終了しないことが条件です。
労使協定で「勤続1年未満の人」「週の労働日数が2日以下の人」「3ヶ月以内に雇用関係が終了する人」は対象外となることがあります。

期間

対象家族1人につき、通算93日まで、3回まで分割して取得できます。

手続きは休業開始予定日の2週間前までに書類を提出

手続きは、休業開始予定日の2週間前までに、書面で事業主に申し出ます。
会社に所定の書類(介護休業申出書)があるかどうか、人事労務担当者に確認してみましょう。

  1. 介護休業の開始予定日と終了予定日を、書面等で事業主に申し出ます。
  2. 申出期間(事業主による休業開始日の繰下げ可能期間)は2週間前までです。
  3. 終了予定日が延びそうな場合は、2週間前までに申し出ることで、93日の範囲内で1回に限り終了予定日の繰下げができます
  4. 休業開始予定日の前日までに申し出ることにより、休業を撤回できます(快復したなど)
    その場合、その後の再度の申し出は1回は可能

会社から、家族に介護が必要であることの証明書類の提出を求められることがあります
「対象家族の氏名および労働者との続柄」「対象家族の要介護状態」を証明する書類です。
証明書類は「介護保険証」「医師の診断書」などですが、状況によってはすぐに書類が用意できないかもしれません。
会社は、証明書類を提出できないことを理由に休業を拒否できませんので、落ち着いてから書類を用意し、提出するとよいでしょう。

休業中の収入について

休業中の収入の確保は悩ましい問題ですが、雇用保険に加入している人は「介護休業給付金」が支給されます。
休業終了後、会社が申請手続きをおこなうことで、休業前の給与の67%が支給されます。
※会社から給与が出ている場合は減額されます。

くわしくはこちらをご覧ください。

介護休暇

介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行うため、1年に5日まで(対象家族が2人以上の場合は10日まで)休暇が取得できる制度です。
半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得も可能です。
ただし1日の所定労働時間が4時間以下の労働者及び、労使協定により半日単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者は、1日単位での取得となります。

対象となる労働者

要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者(日々雇用を除く)
ただし、労使協定で「勤続6ヶ月未満の人」「週の労働日数が2日以下の人」は対象外となることがあります。

手続きはさまざま

介護休暇は、会社に書類を提出したり、口頭で伝える、場合によっては当日電話で伝えることもできます。
事前に会社に状況を説明し、確認しておくといいですね。

労働時間を変更・短縮する制度

所定外労働を制限する制度(残業の免除)

要介護状態にある対象家族を介護するために、残業の免除を申請することができます。

対象となる労働者

要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く)
ただし、労使協定で「勤続1年未満の人」「週の労働日数が2日以下の人」は対象外となることがあります。

期間・回数

1回の請求につき1ヶ月以上1年以内の期間で申請します。
請求できる回数に制限はありません。

手続き

開始の日の1ヶ月前までに会社に申請します。

例外

例外として、事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒むことができます。

時間外労働を制限する制度

要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその対象家族を介護するため、残業時間を減らすことができます。
事業主は制限時間(1ヶ月に24時間、1年で150時間)を超えて労働時間を延長してはならないとされています。

対象となる労働者

要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く)
ただし、「勤続1年未満の人」「週の労働日数が2日以下の人」は対象外となります。

期間・回数

1回の請求につき1ヶ月以上1年以内の期間で申請します。
請求できる回数に制限はありません。

手続き

開始の日の1ヶ月前までに会社に申請します。

例外

例外として、事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒むことができます。

深夜業を制限する制度

要介護状態にある対象家族を介護する労働者は、深夜勤務を免除してもらうことができます。
事業主は労働者から請求された場合、午後10時~午前5時(深夜)に労働させてはならないとされています。

対象となる労働者

要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く)
ただし「勤続1年未満の人」「週の労働日数が2日以下の人」「所定労働時間の全部が深夜にある人」は対象外となります。
また、「介護ができる同居の家族がいる」場合も対象外です。
介護ができる同居の家族とは

  1. 16歳以上であること
  2. 深夜に就労していないこと(深夜の就労日数が1ヶ月に3日以下の人を含む)
  3. 負傷、疾病又は心身の障害により介護が困難でないこと
  4. 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定であるか、又は産後8週間を経過しない者でないこと
    のいずれにも該当する人をいいます。

期間・回数

1回の請求につき1ヶ月以上6ヶ月以内の期間で申請します。
請求できる回数に制限はありません。

手続き

開始の日の1ヶ月前までに会社に申請します。

例外

例外として、事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒むことができます。

所定労働時間の短縮措置等

常時介護を要する対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く)は、対象家族1人につき次の措置のいずれかを、利用開始から3年以上の間で2回以上、利用できます。

  1. 所定労働時間を短縮する制度
  2. フレックスタイム制
  3. 始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ
  4. 労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度

ただし、労使協定で「勤続1年未満の人」「週の労働日数が2日以下の人」は対象外となることがあります。

その他、労働者の立場を守るための措置

介護は、必要なケアは人それぞれです。
また、働き方や仕事の内容、家族構成も人それぞれです。
どうしても立場が弱くなりがちな労働者を守るため、事業主に課せられたいくつかの義務があります。

  1. 会社は、家族を介護する労働者に対して、介護を必要とする期間や回数に配慮して、必要な措置をする(努力義務)。
  2. 制度を利用したことにより労働者がハラスメントを受けることがないようにする。
  3. 転勤や異動などにより育児や介護が困難になる労働者がいるときは、その状況に配慮する。
  4. 制度の利用を申し出たり、制度を利用したことを理由に解雇や不利益な扱いをすることは禁止。
  5. 育児休業や介護休業について、待遇や賃金などについて就業規則に定めて社内に周知する(努力義務)。
  6. 労働者に妊娠・出産や介護をしていることを知った場合は制度を知らせる(努力義務)。

会社によってはもっと手厚い制度があります

ご紹介した内容は、育児・介護休業法に定める最低基準であり、各事業所においてこれを上回る制度とすることは望ましいとされています。
実際、この法律で定められたよりも手厚い内容で、労働者が働きやすい環境を整えている会社もあります
勤め先がどのような支援をしているのか、会社の人事労務担当部署に確認してみましょう。
また、育児・介護休業法は年々見直されていますので、最新の情報をチェックするようにしましょう。

制度を上手に使い、介護と仕事を両立して安定した生活をめざしたいですね。