認知症に備えた財産整理

2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると推測されています。
今や認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気です。
そうなる前のそなえとして、元気なうちに自分はどのように生きたいかを家族に伝えたり、財産や相続について話し合ったりすることは、家族の負担を減らすことにもつながります。
認知症になる前に将来の生活・財産管理・相続などについて何をしておけばよいかをまとめました。

財産を整理する

まずは、財産関連を整理して、家族がわかるようにしておきましょう。

  1. 財産一覧の作成
    これは相続及び将来の生活を考える上で重要な情報です。
    預貯金、有価証券や土地などの資産のほか、住宅や車のローンなども一覧にしておきましょう。
  2. 通帳・印鑑、重要書類の整理
    預金口座が複数ある場合は必要なものを選別し、管理しやすくしましょう。
    また、保険・年金の証書、不動産の権利書などの保管場所も伝えておきましょう。
  3. デジタル情報の整理
    デジタル情報は大きく分けて二つあります。
    ひとつ目はパソコン・スマホ端末内部に保存されている写真・文書ファイルと端末ログインのパスワード。
    ふたつ目はインターネット上の利用しているサービスで、ネット銀行口座・有料会員サービス・SNSアカウントなどです。

自分の思いを整理する

判断能力が衰えた後に備えて、自分がどうしたいか、どうしてほしいかを、まとめておきましょう。

  1. 生前贈与・相続
    相続の方針を決め、税制を踏まえて計画的に財産を移行させましょう。
  2. 生活費・預金の管理
    自分の望む生活と、その生活費用のやりくりについて考えます。
    金銭管理等を家族に頼むのか、第三者に依頼するのか、といったことも考えておきましょう。
  3. 介護や治療の方針について
    元気なうちに決めたことも、実際に当事者となったときに判断が変わるのはよくあることです。
    ただ、生活費同様お金がかかる問題ですので、どのように費用を捻出するかなどは把握しておきましょう。
  4. 自分のお葬式とお墓
    最後の大きな買い物です。
    近年は控えめな葬儀が多くなっていますし、お墓も管理しやすい方向で用意する人が増えていますが、自身の希望があれば考えておきましょう。

手段を考える

自分の思いがまとまったら、具体的な手段を検討しましょう。

財産管理の代理人

既に認知症で判断能力がなくなってしまった場合は、金融取引や重要な契約に法定後見人が必要となる場合が多いですが、判断能力のある時期にあらかじめ契約しておく手段があります。
ここでは3つご紹介します。

①任意後見制度

あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。
判断能力が衰えた後、契約内容に沿って必要な手続きを行います。
後見人制度については当サイトでもご紹介していますのでこちらをご覧ください。

成年後見制度について

②任意代理契約

判断能力がある時期に、本人が代理人に委任状を交付して代理権を付与するものです。
代理人は本人の意思に沿って金融機関等で手続きを行います。
民法上は本人が判断能力を失っても代理権は終了しないとされていますが、金融機関によっては代理を認めないところもあります。

③民事信託

本人が家族などの第三者に特定の財産を移転して、移転を受けた第三者(=受託者)が本人のために財産を管理・処分する義務を負うものです。

どの制度を選択するにしても、費用と手間がかかります。
まずはほんとうにその代理人の必要性が将来出てくるかどうかを考えましょう。
最終的な手段の検討・選択は専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)に相談したほうが良いでしょう。

相続・遺言書

通常、故人の遺産は原則として法定相続(民法)に基づいて分割され、法定相続人が相続します。
しかし、遺産は容易に分割可能な預金だけではなく、証券、不動産などもあります。
誰が何を相続するかを相続人で話し合うことになりますが、すべて円満に分けられるとは限りません。
そのトラブルを避けるそなえとなるのが遺言書です。

遺言書は自分で作ることもできますが、法的な効力を持った遺言書には記載必須の事柄や書式などに条件があります
弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に相談することが近道です。

エンディングノート

遺言書とは異なり、エンディングノートに法的効力はありません
しかし、それゆえに自分の思いや自分の葬儀の希望など、自由な内容を書くことができます。
Web上のエンディングノートのテンプレートなど活用もできるし、多くの市町村では無料で配布しているので、手書きで作成もできます。
自分の希望を整理しつつ家族に伝えることができ、内容を共有してもらえます。

元気なうちに備えましょう

元気なうちに重要な判断をしておくことで、行き当たりばったりで対処するよりも、選択の幅が広がります。
「自分は大丈夫」ではなく「もしかしたら自分も」の気持ちで自分の将来を見つめ直してみませんか。