WIN-WINの関係を目指す「パートナーシップ構築宣言」とは?

個人の所得を上げようと叫ばれる中、とりわけ中小企業で働く人の賃金を上げること、そのためには中小企業の売上げと利益を増やすことが急務です。
政府や日本商工会議所が推進する「パートナーシップ構築宣言」はその施策のひとつです。
今回はその取組みについて紹介します。

「パートナーシップ構築宣言」とは

ビジネスにおいて、発注者が受注者に対し「取引価格の引き下げ」を要求し、受注者側は利益が上がらないのに事業継続のために受けざるを得ない、ということが起こります。
コロナ禍など経済の悪化にともない、こうした状況が増えないよう、パートナーシップ構築宣言は、

・不当な取引をしない。
・会社間で対等に連携してWIN-WINの関係を築く。
・従来取引している系列会社や業種を超えて、新たな連携で取引をする。

などを企業に公式に宣言してもらう仕組みです。

20年6月から開始され、 22年4月時点で登録企業は約7600社です。
「パートナーシップ構築宣言」を宣言をしている企業のうち、大企業は1割程度しかないことから、政府・経済団体はさらなる推進をして行く予定です。
21年12月の参議院本会議でも討議されており、首相も全力で取り組んで行く、と回答しています。

下請事業者にもメリットがある

一番の目的は、大企業や親会社など発注規模の大きい企業に宣言してもらうことですが、企業の大小にかかわらず、「発注者」の立場で自社の取引方針を宣言することがポイントです。

下請事業者も、直接材料や間接材料などを発注するはずです。
規模に関わらず、多くの企業がこの宣言をすることで、大企業も中小企業も適正な取引を尊重しようという機運を高める効果があります。
社会全体で取引の適正化が進めば、宣言を行った企業の業績も向上します。

パートナーシップ構築宣言 WIN-WIN事例

日本商工会議所が成功事例として紹介している中から抜粋して紹介します。

中小・ベンチャー企業が持つ技術・シーズの活用

MoTTo OSAKAオープンイノベーションフォーラム(大阪商工会議所)
大中小の企業、大学、研究機関がそれぞれ技術上のニーズ・シーズを発信し、イベントで個別面談を実施、お互いのニーズ・シーズを調査し、マッチングすれば共同開発を開始する。
※日本各地でこのような展示会・見本市などのイベントが定期的に開催されています。

埼玉県U社(従業員:約130人)
住宅部材を作るために、従来は大工が現場で現物合せで木材を切断して組み立てていたが、U社(建材メーカー)が独自の加工技術を駆使し、自社内でその住宅部材をあらかじめ切断加工し、現場では組み立てるだけという手順に変更したことで、かかる時間とコストが改善した。

規模を問わず企業間で対等に連携して新たなバリューチェーンを形成

広島県E社(従業員:約800人)
食品用発泡トレーのリサイクルのために、商品供給網を活用した回収経路(消費者⇒スーパー⇒包材問屋⇒再生・成形工場)とし、効率的にトレーを回収できるようにした。効果として、
・スーパーはリサイクルのための負担金を軽減できる。
・トレー成形工場は原料を安価に安定確保できる。
・親会社と下請会社間での長期的な信頼関係を築け、共存共栄できる。
・年間約6500トンの回収を達成した。

地域との共存共栄

高知県F社(従業員:約500人)
地域密着の清掃活動を通して関わったことが縁で、イエローハットとフランチャイズ契約を締結し、現在5店舗を運営している。
また、小中学生の掃除実習や植樹活動などの社会貢献を通じて地域との共生を図っている。

その他の例、詳細は下記を参照してください。
地域の中小企業と大企業が取組む「共存共栄」事例 20選!(PDF):日本商工会議所

「パートナーシップ構築宣言」に登録するには

パートナーシップ構築宣言の登録は、中小企業庁が運営するポータルサイトで受け付けていて、現在も登録企業は増え続けています。