出産後も仕事を続ける女性は年々増えていますが、2人に1人のママは妊娠・出産を機に退職しています。
その中には育児休業制度を詳しく知らなかったために、利用をあきらめた方もいたのではないでしょうか。
育児・介護休業法は、夫婦ともに仕事と育児を両立できるような制度改正もされてきており、2022年10月からはさらに柔軟な制度利用ができるようになります。
育児・介護休業法は、育児および家族の介護をおこなう労働者が、仕事と家庭を両立できるよう支援するための法律です。
内容は、育児や介護のための休業・休暇、労働時間の短縮・変更、そして制度を活用しやすい職場にする事業主への義務などがあります。
ここでは「育児休業法」の内容を抜粋し、2022年10月以降の制度利用について解説します。
育児休業制度
育児休業は、従業員が会社に申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、休業することができる制度です。
- 要件に該当すれば誰でも取得できます。
- 父親・母親どちらも取得できます。
たとえば配偶者が専業主婦(夫)であっても取得できます。 - 休業できる期間は子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで。およそ1年間です。
- 2回に分けて取得することができます。(2022年10月~)

産休と育休は制度が異なります
いわゆる産休はママのみ取得できる休業制度で、育児休業とは違います。
厳密には出産の前後(産前休業・産後休業)に分かれています。
産前休業:出産予定日の6週間前から取得可能(双子以上の場合は14週間前)
産後休業:出産日から8週間取得可能
ですので、母親の場合は産後休業の終了日の翌日から育児休業となります。
(父親は出産日・または出産予定日から育児休業となります。)
育児休業が取得できない方
次に当てはまる方は、育児休業の対象外となります。
くわしくは勤務先の担当者に確認しましょう。
- 正社員で、以下に該当する方
①労使協定で在籍1年未満は対象外、とされている場合その対象者 - 契約社員・アルバイト・パートで、以下に該当する方
①子が1歳6カ月になるまでに契約が満了することが明らかな場合
②労使協定で勤続1年未満は対象外とされている場合
③産後パパ育休については、出産日から8週間後の翌日から6か月以内に契約が満了することが明らかな場合 - 日雇い労働者の方
休業を取得できる期間は
ママとパパで異なります。
ママは産後休業(産後8週間)の翌日から子が1歳の誕生日の前日まで
パパは出産予定日から子が1歳の誕生日の前日まで
産後パパ育休(2022年10月~)
産後パパ育休は、育休の取り方に柔軟性を持たせることで、少しでも男性が育休を取りやすくするための制度です。
出産日から8週間以内の期間で、4週間以内の休業が取得できます。
産後パパ育休は、2回に分けて取得することができます。
●2回に分ける場合、最初の申請時に2回目の申請も行う必要があります。
●また、2回の合計が4週間以内でなければなりません。
(4週間を超えた場合、育児休業となります)
もちろん、産後パパ育休を使わずに出産予定日から連続して育児休業をとることも可能です。
申出には期限があります
原則は休業の2週間前までですが、会社によっては1か月前までと取り決めているところもあります。
必ず確認しましょう。
パパママ育休プラス
パパママ両方が育児休業を取得する場合、育児休業をとれる期間が子が1歳2か月になるまでに延長できます。
ただし、いくつか制限があります。
- 利用できるのはパパママどちらか一方のみ
- 育児休業自体が1年2か月になるのではありません。
トータルで1年間の休業期間を、1年2カ月にわたって分割取得できるということです。 - 育休プラスをとる側は、配偶者の育休よりも後で取得する必要があります。
休業期間の延長について
子が保育所に入所できないなどの理由がある場合、1歳6カ月の日の前日(さらに再延長の場合は2歳の誕生日の前日)まで、休業期間を延長できます。
この場合、育児休業給付の支給期間も延長されます。
ただし、申請には市区町村による証明書が必要なので、保育所理由で延長を申請するには入所できないとわかっていても認可保育園への申込をしないといけません。
よくある「いっぱいです」と口頭で断られて申し込みを諦めてしまうケースだと、この証明書がもらえません。
保育所入所のタイミング(主に4月)を目安に育休を取得するケースが多いので、子どもの誕生月から換算して「保活」がどういうスケジュールになるのか、事前に計画を立てておきましょう。
育児休業中の収入について
育児休業中は、雇用保険による育児休業給付金が支給されます。
つまり、雇用保険に加入していて、要件を満たす場合にのみ支給されます。

受給できる要件
雇用保険に加入したうえで、
- 1カ月間在籍していること
- 下記を満たす月が、育児休業開始日前2年間※のうち、12カ月以上あること
※ママは産休に入る前の2年間 - 勤務日数が
正社員:土日祝休日含めて勤務日数が11日以上(または1カ月80時間以上の勤務がある月)
パート等:勤務日数が11日以上(または1カ月80時間以上の勤務がある月)
転職した場合、前職勤務の期間も通算できます。
ただし、その間にハローワークで失業認定を受けた場合は要注意です。
雇用保険の加入期間がリセットされるため通算できず、給付金の対象外となる場合があるのです。
受給できる期間
1歳の誕生日の前々日まで(延長の場合は1歳6か月または2歳の誕生日の前々日まで)、パパママ育休プラスの場合は、取得者のみ子が1歳2カ月になるまで支給されます。
1歳になる前に育児休業を終了した場合は終了日まで支給されます。
支給される金額
- 休業開始から6カ月まで:賃金月額の67%
- 休業開始から6か月経過後:賃金月額の50%
賃金月額とは、休業開始前6カ月間の賃金を180日で割った額×支給日数(月額なら30)です。
これには上限額・下限額があり、賃金月額がそれらを上回る(下回る)場合はこの額を適用します(毎年8月更新)。
2022年8月現在の上限額・下限額はそれぞれ455,700円・79,710円です。
生まれてくる子どもの数が増えても支給額は変わりません。
また、社会保険料の納付が免除されるため、普段の手取り額に比べて67%より多いと感じると思います。
支給までにはタイムラグがあります
育児休業給付金は、会社がハローワークへ書類をそろえて申請し、ハローワークが対応してから支給されるため、無収入になる期間が発生することになります。
くわしくはこちらをご覧ください。
収入が減ること・無給期間が起こりうることを考慮して、事前にお金の準備はしておきましょう。
その他、育児に関して利用できる休暇・制度
子の看護休暇
- 子どもの看護など(予防注射や健康診断も含む)で休暇が取得できます。
(年次有給休暇とは別に取得できる) - 子ども1人の場合年5日、2人以上の場合は年10日。1日または時間単位で取得可能
- 子どもが小学校入学前まで、利用できる制度です。
その他の育児目的で利用できる休暇(努力義務)
「子の看護休暇」は子供のケガ・病気・予防接種など特別な事情がないと取得できませんが、以下は配偶者の出産や子の行事参加などのために取得できます。
「育児休業」「子の看護休暇」とは別に育児休業法で努力義務として定められている休暇なので、会社によっては規則がない場合もあります。
有給か無給か、取得可能日数なども会社の規則によりますので、勤務先の担当者に確認してみましょう。
労働時間を短縮・変更する制度
子どもが3歳になるまで利用できる制度
- 働く時間を短くする(短時間勤務制度)
就業規則などで定められている1日の勤務時間を短縮する - 残業の免除(所定外労働を制限する制度)
子どもが小学校入学前までに、利用できる制度
- 残業時間を減らす(時間外労働を制限する制度)
残業時間を1ヶ月で24時間、1年で150時間以下に制限する - 深夜勤務の制限(深夜業を制限する制度)
午後10時から午前5時までの労働を免除する
以上、制度を子どもの年齢軸でまとめると下図のようになります。

解説した内容は法律で定めた最低基準であり、皆さんが実際利用される条件は、それぞれの会社でルール化されていますので、勤務先の担当に確認しましょう。
また、この法律は年々見直されていますので、最新情報をチェックしておくとよいでしょう。
育児休業しやすい職場環境に仕向ける規則(事業主向け)
育児休業を取得しやすい雇用環境の整備のために、次のいずれかの処置を講じることを義務づけています。
- 研修の実施
- 相談窓口の設置
- 社員の育休取得事例の収集・提供
- 社員へ育児休業制度及び育児休業取得促進に関する方針を周知
また、社員本人または配偶者の妊娠出産を申し出た場合、その者に対し個別に育児休業制度の周知と休業の意向確認を行うことを義務付けています。
さらに、
- 育児休業などを申出・取得したことを理由とする不利益な取り扱い(解雇、雇止め、降格など)の禁止
- 育児休業などに関するハラスメント防止の対策義務
- 男性社員の育児休業などの取得率の公表義務(雇用する労働者1001人以上の会社向け、令和5年1月より)
などもあります。
中小事業主向け育休支援のための助成金
男女を問わず社員に対し、育休取得と仕事・育児の両立させることの推進を目的に助成金制度に取り組んでいます。
下記内容に該当する会社に対し助成しています。
- 男性社員が育休を取得しやい雇用環境を整える。
- 男性社員の育休取得の実績を作ったり、取得率を上昇させる。
- 男女とも円滑な育休取得と職場復帰のためのプランを立て、実践する。(対象は男女)
対象は中小企業のみで、名称は「出生時両立支援コース」と「育児休業等支援コース」です。
詳細は 2022年度 両立支援等助成金のご案内(厚生労働省・PDF)をご覧ください。