加齢による運転技術の衰えを自覚したり、家族などから指摘されたりすると、「免許証の返納」という言葉が頭に浮かびます。
とはいえ「自動車がないと生活が成り立たない」「身元を証明できるものがなくなるのは困る」などの理由で尻込みする方も多いのが現状です。
運転免許証の返納について、簡単にまとめました。
自主的な返納の制度
運転免許証の返納は、高齢などの理由により、自主的に運転免許証の返納を申請して運転免許を取り消す制度です。
①取得したすべての運転免許を返納する場合と、②上位免許を返納して下位免許を残す、あるいは下位免許を取得する場合があります。
全ての免許証をなくしてしまうのではなく、自動車の運転免許のみ返納して、原付の免許は維持する、といったこともできるのです。
返納時に申請する「運転経歴証明書」が新しい本人確認書類
運転免許を返納する際、「運転経歴証明書」を申請することができます。
運転免許証に似たデザインで、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として利用できます。
発行には手数料がかかります(静岡県は1,100円)が、自治体によって助成制度もありますので活用しましょう。
返納による特典
免許を返納すると、自治体やお店などでさまざまな特典が受けられるようになります。
特典内容は自治体によって異なりますが、運転経歴証明書を提示することでメガネを安く作れたり、公共の交通機関が割引もしくは無料で利用できるようになるなどのサービスが一般的です。
さらに、運転免許自主返納者への支援に協賛するお店でも、タクシーの運賃が割引になる、美術館などの入館料が割引になる、ホテルに割安で宿泊できる、免許返納で不要となった自動車を売却する際にプレゼントがある、購入した商品の無料配達サービスが受けられるなど、運転しなくなることで変わる生活を応援する特典がたくさんあります。
一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会の高齢運転者支援サイトでは、全国各地の自治体・お店の特典をまとめています。
ぜひご覧ください。
免許証を自主返納する手続き
免許返納の手続きは、最寄の免許センターもしくは居住地を管轄する警察署の窓口で申請できます。
免許返納に必要なものは次の二つです。
- 運転免許証
- 印鑑
運転経歴証明書の発行申請を同時におこなう場合は、さらに
- 交付手数料
- 警察署の窓口で申請を行う場合は写真(3cm×2.4cm)
も必要です。
手続き完了後は無免許状態になります。手続きへは公共の交通機関や家族が運転する車を利用して行きましょう。
代理人による返納申請もできます
運転免許証の返納は原則として本人のみとされてきましたが、代理人を通して免許返納申請ができるようになりました。
免許返納を代理人に委任する場合に必要なものは
- 代理人本人の確認書類(代理人となる人の運転免許証や戸籍抄本など)
- 誓約書(代理人が記入)
- 委任状兼確認書(免許返納者本人が記載)
返納と同時に運転経歴証明書の委任交付申請を行う場合は、下記の三つも必要です。
- 代理人の印鑑
- 委任状兼確認書(免許返納者本人が記入)
- 誓約書(代理人が記入)
健やかに生活し安全に運転しましょう
運転を止めた途端に、それまで元気だった方がふさぎこみがちになったとか、認知症になったという話を聞いたことがあるかもしれません。
現在、70歳以上の運転者は、運転免許証の更新するときに高齢者専用の講習を受けることになっています。
さらに75歳以上の運転者は、講習の前に認知機能検査を受けることで、免許証を更新できます。
安全に運転できているのであれば、一日でも長く運転を続けられるよう、家族で見守ってあげることも大切ですね。
しかし運転は、多くの情報を分析し、いくつもの選択肢から最適なものを判断し、そのうえで手足に動かすということを瞬時におこなう、たいへん高度な動作です。
具体的に認知症が進行しているとか、すでに何度か事故を起こしたというように明確な根拠がある場合は、不幸な事故を防ぐためにも一日も早く免許証の返納をしなければなりません。
もしも、家族が説得できない場合は、近くの警察署や各都道府県が設置する運転適性相談窓口(運転免許センター・警察署免許窓口)に相談してみましょう。