かかった医療費がもどってくる「高額療養費制度」

「高額療養費制度」は、高額になった医療費を払い戻してくれる制度です。
心身ともにつらい時に、さらにお金の心配もするのはしんどいものです。
上手に制度を使って、少しでも負担を軽くしましょう。

高額な医療費の一部を支給してくれる高額療養費制度

  • どこへ申請する?:加入している医療保険の窓口へ。病院の相談窓口でもくわしく教えてもらえます。
  • いつ申請する?:ひと月の医療費が上限を超えたら。

「高額療養費制度」を利用すると、ひと月にかかった医療費のうち、一定の金額(上限額)を超えた分のお金がもどってきます。

たとえば50代で年収600万円の人の場合、入院・手術で100万円の医療費がかかったとすると、窓口で支払うお金は3割の30万円になります。
「高額療養費制度」を利用すると、支払った30万円のうち21万円あまりがもどってきます
ぜひ申請して、払い戻しを受けましょう。

年齢と所得で自己負担の上限額は決まります

70歳以上か69歳以下か、さらに所得に応じて自己負担の上限額は決まります。

70歳以上の人

70歳以上の方は、外来だけの上限額もあります。

適用区分 ① 外来の上限額(個人ごと) ② ひと月の上限額(世帯ごと)
現役並み:年収約1160万円~
(標報83万円以上、課税所得690万円以上)
② 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
〈多数回 140,100円 (※2)〉
現役並み:年収約770万~約1160万円
(標報53~79万円、課税所得380万円以上)
② 167,400円+(医療費-558,000円)×1%
〈多数回 93,000円 (※2)〉
現役並み:約370万~約770万円
(標報28~50万円、課税所得145万円以上)
② 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
〈多数回 44,400円 (※2)〉
一般:年収156万~約370万円
(標報26万円以下、課税所得145万円未満等)
① 18,000円
(年間上限144,400円)
② 57,600円
〈多数回44,400円(※2)〉
Ⅱ 住民税非課税世帯 ① 8,000円 ② 24,600円
Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
① 8,000円 ② 15,000円


※:1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等での自己負担を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。
※2:過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。

69歳以下の人

適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
ア:年収約1,160万円~
(健保:標報83万円以上/国保:旧ただし書き所得901万円超)
252,600円+(医療費-842,000)×1%
イ:年収約770~約1,160万円
(健保:標報53万~79万円/国保:旧ただし書き所得600万~901万円)
167,400円+(医療費-558,000)×1%
ウ:年収約370~約770万円
(健保:標報28万~50万円/国保:旧ただし書き所得210万~600万円)
80,100円+(医療費-267,000)×1%
エ:~年収約370万円
(健保:標報標報26万円以下/国保:旧ただし書き所得210万円以下)
57,600円
オ:住民税非課税者 35,400円


※1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必要です。)を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

※表はいずれも2018年8月現在。2018年8月診療分からは金額が変更になりました。

計算例:30万円のうち21万円がもどってくる

例えば50代で年収600万円の人が、手術・入院費で100万円の医療費がかかったとします。
自己負担額が3割となるため、30万円支払うことになります。

高額療養費制度を利用すると、自己負担の上限額は上記の表から

80,100円+(医療費-267,000)×1%
=80,100+(1,000,000-267,000)×1%
=80,100+7,330
=87,430円

となります。

ですので、支払った30万円のうち

300,000-87,430=212,570

21万円余りを払い戻してもらえるのです。

対象となるのは、保険適用分の医療費です

高額療養費として認められるのは、健康保険の適用内の医療費です。
先進医療による治療費や、差額ベッド代、入院中の食事代などは含まれません。

例えば上記の例で、
100万円のうち先進医療による治療費が20万円だった場合、保険適用分の医療費80万円が高額療養費の対象となります。

窓口での支払いは、
先進医療による治療代20万円(実費)と、保険適用分の80万円の3割負担の24万円を合わせた44万円となります。

高額療養費制度を利用すると、自己負担の上限額は

80,100円+(800,000-267,000)×1%
=80,100+5,330
=85,430円

となりますので、保険適用の負担分の24万円のうち、

240,000-85,430=154,570

15万円あまりがもどってきます。

扶養のご家族の分もまとめて計算できる「世帯合算」

家族も通院していて…という場合は、世帯で合算して申請することもできます。
ただし、同じ健康保険に加入している必要があります。

上限額を超える月が多い場合はさらに減額できる「多数回該当」

12か月の間に3回以上申請した場合、4回目以降は上限額をさらに引き下げられます。
上記の例だと、44,400円に引き下げられます。

当座のお金を用意するのが難しい場合

高額療養費制度は、「一度支払ったあと申請して、払い戻しを受ける」制度なので、とりあえず医療費の自己負担額を支払う必要があります(上記の例だと30万円)。
そして、申請から払い戻しまでに3か月ほどかかります。
退院してもしばらく療養が必要だったり、通院治療でお金がかかるなど、お金が必要となりそうな時期にまとまったお金を用意することが難しい場合もあるでしょう。

安心して治療にのぞめるよう、次のようなしくみもあります。

「限度額適用認定証」で窓口負担が上限額ですみます

入院・手術が決まった時点で、健康保険の窓口に「限度額適用認定証」を申請しましょう。
病院や薬局の窓口に、この「認定証」を提示することで、支払いを上限額までに抑えることができます(上記の例だと87,430円の支払いで済む、ということです)。
ただし、複数の医療機関や複数の科に受診している場合、それぞれに上限額までの支払いが発生するので、ひと月の合計が上限額を上回ることもありえます。
その場合は高額療養費の申請をして払い戻しを受けます。

医療費を無利子で借りられる「高額療養費貸付制度」

加入している健康保険によっては、当座の医療費のうち8割~9割を無利子で貸し付けする「高額医療費貸付制度」というしくみがあります。
返済は「高額療養費制度」の払い戻し金からあてられるので、返済の心配はありません。
差額が発生したら、その分は払い戻されます。

国保なら「委任払い」という選択肢も

自治体によっては「高額療養費受領委任払い」という制度を設けているところもあります。
貸付制度のかわりに、「高額療養費に相当する分を自治体から病院に支払う」しくみです。
こちらも、窓口での負担が上限額までですみます。

請求書や領収証は保管しておきましょう

上記の手続きで必要になることがあるほか、確定申告で「医療費控除」を申告して税金を低く抑えたり、年間でかかった医療費が高額になった場合はさらにお金が戻ってくる制度(高額医療・高額介護合算療養費制度)もあるので、請求書や領収証は大切に保管しましょう

申請が不要な健康保険もあります

加入している健康保険によっては、医療機関からの明細書をもとに自動で払い戻しをしてくれるところもあります。

申請・問い合わせは、各健康保険の窓口へ

申請は、加入している健康保険の窓口(健康保険証に書かれています)へ。

病院の相談室などでも、くわしく教えてもらえます。
入院手続きの際、支払いについてのお話の中で、病院の方が教えてくださることも多いです。
はやめに手続きをして、お金の心配をせず、安心して治療にのぞみたいですね。